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果樹生産を行う上では、剪定整枝など他の作物とは異なった空間把握や技能向上が必須です。そこで、実際の園地の樹形情報を時系列に三次元データ化しています。作成したデジタル園地を利用して、栽培技術向上のためのサポートを行うツールを作成・提案しています。もちろん、果実品質の情報も含めてデジタル園地に表現する方法を検証しています。

樹形の三次元デジタル情報化


果樹は樹木であり、一年生作物(イネや野菜)にはない特徴があります。例えば、特に樹が長大であること、収穫まで時間を要すること、そもそも収穫後も樹そのものが残るという特徴などがあります。そのため、植物の成長段階によって取るべき管理方法が大きく異なります。果樹農家は果樹の樹を管理するためには、三次元的な空間把握に年単位の時間的な認識を掛け合わせて、理解する必要があります。この時系列の空間把握を促進するために、果樹園や樹体の三次元情報をデジタル空間で表現することを試みています。


果樹園のデジタルアーカイブの構築を目指します。デジタルアーカイブでは、園地の空間情報を三次元点群などで表示する方法を検討しています。主にはLiDARなどの測量手法を利用して園地を撮影・合成しています。また、三次元データを必要に応じて簡素に取得する方法も検証しています。もちろん、樹形のデジタル化だけではなく、園地で得られた糖度やサイズ、収穫量などの情報も付与することを検証しています。


このようなデジタルデータの蓄積を基に、栽培技術向上の助けとなるツール開発や利用するコミュニティ作り、その先には栽培シミュレーションや管理の自動化技術にも繋げていきたいと考えています。



一般的な栽培指針での果樹樹形の二次元表現
一般的な栽培指針での果樹樹形の二次元表現

モモ樹のデジタル化
モモ樹のデジタル化

【動画】モモの甘さと着果位置の関係を表示(赤いほど甘い)



デジタルアーカイブを用いた指導ツール形成


上述のデジタル化した三次元果樹園の情報をもとに、栽培指導を行うためのツールを作成しています。まずは剪定の目利きなどの栽培知識や経験の情報共有や議論を行える機会形成を目指しています。例えば、冬季の剪定や誘引など果樹には特有の専門技能が必要ですが、初心者には理解しがたく、中堅者でもまだ迷うことが多いです。こういった点の解消手段やさらなる技能向上の機会として、栽培現場では剪定講習会などの勉強会が多く開催されています。こういった現地での勉強会を園地のデジタルアーカイブを用いて代用する、振り返る、さらにはよりよい技能向上の機会を形成することを目指しています。


果樹の樹形をシミュレーションしていくことや自動化していくためにデータを蓄積することは必須ですが、果樹ではなかなかデータは集まりません。完成するまで利用できないのでは、なかなか先が見えません。このあたりのジレンマを解消する目的で、この数年は、今ある三次元データで実証指導を行うとともに、様々な機会提供やアドバイスができないか?を考えています。


開花、収穫、落葉時のモモ樹のデジタルデータ
開花、収穫、落葉時のモモ樹のデジタルデータ

【動画】剪定前後のモモの樹の様子

デジタルツールを用いた剪定勉強会の様子(和歌山にて)
デジタルツールを用いた剪定勉強会の様子(和歌山にて)



収穫時の圧力を測定するハンドセンサ検証


果物の収穫作業時には、手から果実に圧力がかかります。当然のことですが、この圧力により、果実には潜在的な痛みの原因が生じます。特に日本産のモモは、「収穫する時、モモを握らない」やスーパーなどで「モモには触れないでください」と言われるように、非常にデリケートです。当然こういった繊細な果物をどのように扱うべきか?を検証する必要があるのですが、数値化する情報がありません。そこで、果実に対する握り圧を測定するハンドセンサ開発とその実証を行っています(ハンドセンサの開発は会津大学荊研究室が行っています)。その果実の傷みの進行と品質への影響を評価しており、データ化された初心者とプロとの握り方の違いを検証しています。


日本産果物痛みに対して敏感です。国産果樹、特にモモなどの圧力に弱いにもかかわらず、収穫動作に“つかむ”工程が入るため、海外のような収穫自動化(吸引式)とは、異なります。ゆくゆくは、こういった自動化の部分にも貢献できる技術です。


【動画】ハンドセンサを使ったモモ収穫時の圧力計測

モモ果実の圧力負荷後の外観の変化
モモ果実の圧力負荷後の外観の変化


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お問い合わせ

福島県福島市金谷川1 福島大学

IPC308(情報管理センター3階)

果樹園のデジタル情報化と現地利活用

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